2011年3月11日
あれからもう5年ですね。
今日は、災害時における自転車の役割についてお伝えします。
1.震災で見直された自転車の価値
あの震災直後、『自転車』というものが大きく見直されました。被災地では道路が寸断され、ガソリンも手に入らない。そんな時に、『自転車』が人々の移動や輸送の手段として大活躍しました。
また東北の被災地だけでなく、首都圏にも大きな影響がありましたね。震災当日の多くの帰宅困難者、そして自転車が売り切れる自転車屋が続出したこと、ニュースの報道を覚えている方も多いのではないでしょうか。徒歩よりもはるかに長い距離を楽に移動できる、そしてガソリンなどのエネルギーを必要としないという事で、その価値が再認識されたのです。
実際に私が勤めていた小田原の店舗でも、ガソリン不足や輪番停電などにより、通勤手段を自転車に変えられた方が多くいらっしゃいました。
車や公共交通機関が乱れる中、自転車という物をしっかりと提供することによって人々の生活を少しだけ支えられている。そんな気持ちになった事を良く覚えています。
被災地でも自転車があることによって徒歩に比べると大幅に行動範囲が広がり、また連絡や輸送など欠かせないツールになっていたとの事。
そういった状況で、現地では自転車整備士が足りずに、各地からボランティアが駆け付けたこともニュースになりました。私もボランティアに行くことを計画していたのですが、自店も関東地区にあり、その多忙を理由にして結局行きませんでした。今でも後悔していますし、その後悔があったので、『アフリカでの整備士教育のボランティア』という話があった時に、すぐに行くことを決断しました。
話が脱線しましたね!今回は万が一の災害時にどのような自転車が選ばれていたか、そして有効だったかを踏まえてまとめてみます。
2.万が一の災害時、どのような自転車が良いか
ロードバイク、クロスバイク、MTB(マウンテンバイク)、ランドナー、ピスト、BMX、軽快車(ママチャリ)etc…色々な種類の自転車がありますが、万が一の災害時の使用という事にフォーカスすると、どの自転車が最も良いでしょうか?今回はロードバイク、クロスバイク、MTB、そして軽快車に絞って検証してみたいと思います。
ロードバイク
まずはロードバイク。こちらは舗装路を低負荷・高速で長い距離を走ることを主目的とした自転車です。タイヤの細さ、フレームの強度、前傾のキツイポジション…
ご想像の通り、あまり適した自転車とは言えません。
MTB
続いてMTBはどうでしょうか?
MTBは元来オフロード(未舗装路)を走破するために設計されています。頑丈なフレーム・太いタイヤ・フロントサスペンションなど、路面コンディションの悪いところでも走れるように設計されています。モデルによってはタウンユース(街乗り)用に、凸凹のないスリックタイヤが装着されているものもあります。その場合、オフロードでの走行性能は落ちますが、タウンユースの際には路面抵抗が格段に少なくなりますし、スリックタイヤでも太めのタイヤを履いていますので、コンディション次第では未舗装路でも多少楽に走ることが出来ます。
様々な路面状況が予測される災害時、MTBは力を発揮しそうですね。
クロスバイク
さてクロスバイクはどうでしょうか。
クロスバイクというのは、ロードとMTBの中間にあたるカテゴリですが、モデルによってかなり幅があります。ロードバイクのように高速走行を目的としたものもあれば、MTBのようにオフロードでの走行も考慮されているものも。
災害時というのを考えると、クロスバイクの中ではMTB寄りの、オフロード走行も多少考慮されているもの、あるいはタウンユースでも丈夫なフレームと太いタイヤを備えているものが適していそうです。
軽快車
最も台数が多く普及しているのがこの軽快車。商品によって性能、耐久性はピンキリですが、上記3タイプのスポーツバイクに比べると、抵抗が大きく重量も5kg~10kg以上重いことが多いです。自転車での移動がメインになった状況を考えますと、少し大変かもしれません。タイヤも舗装路のみを想定して作られていますので、MTB,クロスバイクと比べると不利だと言えます。
ただ一点、万が一の災害時でもパーツが入手できる可能性が最も高いのがこの軽快車かもしれませんね。
結局最も災害時に強い自転車は?
本当に状況により変わると思いますが、やはりMTBあるいはオフロード走行が可能なクロスバイクが良いのではないでしょうか。
MTBといっても、本格的なダウンヒル用、レース用というものまでは必要ありません。ようするに、
・丈夫なフレーム
・太いタイヤ
・状態を起こして乗れるポジション
以上が、万が一の災害時の相棒としての条件ではないでしょうか。
・多少の事では壊れない安心感
・パンクをしにくい太めのタイヤ
・荷物を背負う可能性も考え、前傾姿勢がきつくないもの
ちなみに最近ではシクロクロスなんていうのも選択肢に入ってくるかもしれませんね
もうひとつポイントを付け加えるとしたら、MTBやクロスバイクの場合、現段階ではVブレーキの車体の方が、パーツが入手しやすい可能性があるという事。MTBとしてはグレードの低いモデルになる事になりますが、情報として覚えておいてください。
3.防災グッズと自転車
ホームセンターなどで防災グッズコーナーというのを目にしたことはありませんか?水や食料、救急用品や簡易トイレなど防災グッズ一式をまとめて販売していたりします。自転車も、そんな防災グッズの一つなのではないかと思うのです。
そんな自転車も、万が一の時にしっかり使えるように、日ごろからメンテナンスをしておくことが重要です(もちろん日々の安全のためにも重要)そして必要最低限のスペアパーツを常備したり、工具も揃えておくと安心かもしれませんね。
4.最後に
2011年3月11日
みなさんはどこで何をされていましたか
そして5年後の明日をどのような気持ちで迎えますか
私も少し時間を取って、考えてみたいと思います。
震災、またその影響で犠牲になられた方のご冥福を心よりお祈りします。
『自転車のある日常に安全と安心を』
サイクルホームドクター
Cycle Days