以前Facebookページ上でもお伝えしたこのトピック。
先日メンテナンスをしたロードバイクでも同じような事象が発見されましたので、再度お伝えしようと思います。
【チェーン切れの危険と適切な変速について】
今回お伝えするのはたった一度、無理な変速をしたことによって起こったチェーンの不具合についてです。
写真は
「漕いでいると後ろのギア付近からチャリチャリと小さな音がする気がする」
と持ち込まれたものです。チェーンのインナープレートが曲がってしまっており、これが隣のギアに接触して異音が発生していたようです。
聞き取りをしたところ
この自転車をお友達に貸してサイクリングに出かけた時の事
借りた方がダンシング(立ちこぎ)でスピードを出していく途中、強い踏力を加えたままフロントをインナーからアウターに変えた時に発生したと思われます。
変速の瞬間は「パキパキ!」という通常の変速から比べるととても嫌な音がするのですが、経験のない方は意外とこれを無視して乗ってしまいます。
そしてこのまま乗り続けるといずれチェーン切れをしてしまう可能性が高いのです。
アフリカの青少年チームでマネージャー兼メカニックをしていた時、あまりにもチェーン切れが多かったので、選手たちと一緒にトレーニングに出ました。
そこで判明したのが、ナミビアではナショナルチームに所属しているレベルを除き、実に多くの選手たちがチェーンに負荷のかかるギア選びとシフティングをしていました。
・スプリントをしながらフロントの変速操作をする
・インナーハイ(いわゆるたすき掛けの状態)で長く、負荷をかけて乗っている
など。
ペダルを一定の踏力で踏んでいる時は良いのですが、瞬間的に強く力を加えたときに変速をすると、チェーンに強いテンションが(縦の力)加わっている時に変速器がチェーンを押す(横の力)を事になり、チェーンや変速機の変形、最悪の場合その場で破断してしまう可能性もあるのです。
想像してみてください。加速しようと強く踏み込んだ瞬間にチェーンが切れたら。。。
簡単に言うと、立ち漕ぎ・キツイ上り坂での変速には注意が必要なのです。(特にフロント!)
坂の勾配を見ながら、早め早めに変速をしていく事が重要です。
加速の時も戦略的にギア選びをしていく事が大切ですね。
選手たちにそれを伝えてからは格段にチェーン切れが減りました。
また、クリーニングと注油が適切に行われていない場合もチェーンの寿命を削ります。
当然ながら汚れたまま、もしくはオイルが無い状態ではチェーンのリンク・プレートが擦れあい摩耗しやすくなってしまいます。
ネット上などで「チェーン切れ 原因」などと検索すると
「取り付けをした店舗か、製品自体に問題がある」
「いくら変速が悪くても一カ月で切れるのはおかしい」
という投稿やコメントを見かけます。そしてもちろんその可能性もあります。
ただ上述したように実は操作方法やメンテナンスが原因の事もあるのです。
いずれにしても良く観察すればどこかに原因を推察できるような痕跡があるもの。
私たちメカニックの役目として、それを冷静に判断し、明確にしてわかりやすく説明をし、今後ユーザーさんが同じトラブルに見舞われないようにする事が大事ですね。
自転車は素晴らしい乗り物、スポーツですが
命を落とすことも、命を奪う事もある乗り物です。
今一度、操作とメンテナンスについておさらいして、これからのサイクリングライフを楽しみましょう。
『自転車のある日常に 安全と安心を』
サイクルホームドクター
Cycle Days